流行予知に関する一考察 4

 当ブログでは、これまで曖昧な感覚にたよっていたファッションの科学的定義を試みる。ファッション業界には、科学やら定義などというと拒絶反応を示す者が多くいる。だが、成長がとまり構造的不況に陥ったファッション業界では、感覚にたよる従来のやりかたでは生き残ることさえ難しくなっている。そこで私は、科学的思考のできる、より文明的で知性的な人材を育てる必要があると考え、研究内容を公表することにした。

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< 全てはここから始まった >

 稀にではあるが、街やショップで素敵な服とすれちがい、立ち止まり、振り返えり、そして呆然と見入ることがある。 ファッションの要素において、形状や色柄素材などから新鮮な驚きの衝撃を受け、目を見開き、呼吸すら忘れて身じろぎもできずに魅入った経験はだれにでもあるはずだ。


 そのとき私は次のように自問した。私は何に驚いているのだろう、この新鮮な驚きはどこからくるのだろう。そして、何故立ち止まり振り返るのだろう、なぜ目を見開くのだろう、なぜ生命の危機を覚えるほどに呼吸が乱れるのだろう。新鮮なファッションに出会うと、誰もが同じ感覚を覚えるのだろうか・・・と。



 稀にではあるが、街でやショップで不快な服とすれちがい、立ち止まり、振り返えり、そして呆然と見入ることがある。ファッションの要素において、形状や色柄素材などから不快な驚きの衝撃を受け、目を見開き、呼吸すら忘れて身じろぎもできずに見入った経験はだれにでもあるはずだ。



 新鮮さや不快感などの驚きの情念を発するからには、脳は明らかに慣れ親しんだ情報とは異なる非日常的な部分を感じとっているのであり、その情報の受信は本人の自覚できない深部で進行しており、ただ呆然と受け入れるしかない。


 ファッションを解くにあたって、この「驚き」は重要な要素だと考える。ここに、社会現象の発生に関与する脳の重要なメカニズムが潜んでいる。この「驚き」に、ファッション(流行と称される社会現象)の構造を解く鍵が隠されているのだ。

つづく