流行予知に関する一考察 8

 当ブログでは、これまで曖昧な感覚にたよっていたファッションの科学的定義を試みる。ファッション業界には、科学やら定義などというと拒絶反応を示す者が多くいる。だが、成長がとまり構造的不況に陥ったファッション業界では、感覚にたよる従来のやりかたでは生き残ることさえ難しくなっている。そこで私は、科学的思考のできる、より文明的で知性的な人材を育てる必要があると考え、研究内容を公表することにした。

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< 記憶の法則性 >

人が言葉を記憶する際は、その言葉の意味と似ているもの同士を結びつけて一本の糸に連鎖状に結線して貯蔵される。 似ているもの同士とは、そのコトバに対して連想作用が働くもの、又は対立作用が働くものを指す。

これについて疑問に感じるかもしれないが、実は連想概念と対立概念とは全く同じものなのだ。 たとえば、「遅い」という言葉は、何に対しておそいのか。また、「早い」や「速い」は何に対してはやいのか。 これは、比較してこそ理解可能なコトバなのであり、それらのもつ意味は絶対的ではなく相対的であるために不可分なのである。 故に脳は、対立概念を同一概念と判定し、一本の連想の系に結線してコトバを貯蔵する。

「おそい」と「はやい」は、人の概念上では対立していても、記憶する際は連想する概念として取り扱われることになる。
当コラムを愛読する方には、人がコトバを記憶する際の法則性に注目してほしい。ここに、集団における趣向性の変化(流行)が持つ規則性や法則性の共通点を感じ取ってもらいたい。

一般的に、「短いスカート」と「長いスカート」は対立する概念である。人は、快をもって片方を受け入れると相反する概念を不快の念で拒絶する傾向を持つ。 しかし、顕在意識では対立する概念であっても潜在意識の下では同一概念として扱われ、同じ連想の系に連結されることになる。

 この顕在意識と潜在意識との乖離の巾が、流行の発生と消滅(揺らぎ)に深く関与していることは明らかである。しかし、人は脳の反射への気づきを封印されて設計されているために、流行は、理解できないもの、不快なもの、不潔なもの、おろかなもの、反社会的なもの、と位置づけて排除しようとする愚行の連鎖から永遠に逃れることができない。