流行予知に関する一考察 9

< 推論における最小単位 >

前項で私は、「短いスカートと長いスカートは対立する概念だ。人は快をもって片方を受け入れると相反する概念には不快の念をもって拒絶する傾向を持つ」と書いた。 これは、対立概念ながらも連想概念として同じ系に連結される要素の間には、逆相関的揺らぎが存在することを意味している。

服飾におけるデザインとは物質の状態を指す。そして、状態や形態の多くは一対の対立する連想概念(言葉)で表現される。 「有」と「無」、「大」と「小」、「長」と「短」、「広い」と「狭い」「厚い」と「薄い」、「重い」と「軽い」、「上」と「下」・・・のように、二律背反する状態の概念はセットとなってこそ認識が可能となるのであり、このような言葉のもつ法則性は、状態の記憶とその引きだし手順(思いだし)に規則性を与えるものである。

これら不可分な概念が内包する対立項の揺らぎは、言葉を操る人間の脳が思考する際の最小単位の基本動作(推論エンジン)なのであり、この動作を追求することでファッション(流行現象)の本質に近づくことが可能となる。