流行予知に関する一考察 7

 当ブログでは、これまで曖昧な感覚にたよっていたファッションの科学的定義を試みる。ファッション業界には、科学やら定義などというと拒絶反応を示す者が多くいる。だが、成長がとまり構造的不況に陥ったファッション業界では、感覚にたよる従来のやりかたでは生き残ることさえ難しくなっている。そこで私は、科学的思考のできる、より文明的で知性的な人材を育てる必要があると考え、研究内容を公表することにした。

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< 情報の記号化 >

 人間が他の生命体より高度な文明を獲得できたのは、情報の記号化に成功し、「事象の近似」の貯蔵や再利用が可能となったからである。
これにより時間と空間に束縛されることなく、情報の共有が可能となった。 この情報の記号化なくして秩序や価値や印象の伝播は発現できないのであり、人は「記憶」や「思いだし」すらままならない。

 言葉は事象を近似的に記号化したものであり、文字は言葉をさらに記号化したものである。 知らない言語でも、それをを繰りかえし聞いているうちに、音声と情報との間の関連性を感じとれるようになる。これはパブロフの条件反射として誰もが知るところだ。 しかし、言葉を操る人の脳内では条件反射だけでは説明のつかない反射が常に引き起こされている。

 梅干を食べると唾液量が増加する。これを経験をした脳は、「梅干」と聞くだけで唾液量の増加をうながす。これは条件反射である。 次に、何のイメージも湧き上がらないように注意深く脳をコントロールし、「う・め・ぼ・し」と4個のひらがなを思い浮かべてほしい。すると、多くの人は若干量の唾液の増加を確認できるのではないだろうか。 この反射は条件を必要とせずに起こる現象であるために、条件反射と呼ぶことはできない。

 以上のテストから、言葉とは、条件反射が時間経過の後に無条件反射へ転化した「後天的無条件反射」を誘発する因子だと捉えることができる。 そして、言葉が脳への情報書き込み(記憶)や、引きだし(思いだし)の重要な鍵となっていることが解かる。