流行予知に関する一考察 10

さて、当ブログの主題はファッションであるから、以上の考察をボトムへ応用してみよう。

<ボトムを構成する主要な対立項>
短い丈←→ 長い丈
狭い腹帯←→広い腹帯
浅い股上←→深い股上
低いウエスト位置←→高いウェスト位置
裾にボリュームなし←→裾にボリュームあり
ヒップにボリュームなし←→ヒップにボリュームあり


<従属的対立項>
無地←→ 柄
厚い←→薄い
重み←→軽さ
直線←→曲線
粗さ←→緻密
集合←→拡散
硬い←→柔らかい
対称←→非対称
揺れる←→揺れない
透ける←→透けない
温かみ←→冷たさ
抽象柄←→具象柄
光沢なし←→光沢あり
凹凸感あり←→凹凸感なし


これを読んであなたは、ボトムを構成する主要素の少なさに驚きを感じるかもしれない。
しかし、実際にデザインをしてみると、これ以上の細分化は必要ないことがすぐに理解できるはずだ。
人間のひらめきには制限がない。上記の対立項の組み合わせだけで無限にデザインが可能なのだ。
そして、要素のそれぞれが固有の周期エネルギーで揺らいだときに何が起こるかを想像してほしい。
部分的な価値観(主観)の揺らぎの集積が、全体の価値観(客観的価値観)を紡ぎだす。
主観と客観の混沌の集積は統計的に必ず客観(平均値)をあらわす、それが社会現象でありファッションなのだ。

遠い昔から社会現象には周期があると言われてきた。
○○年周期説を唱える経済学者は無数に存在する。そしてこれからも現われては消えてゆくだろう。
流行には周期があるとするファッション評論家も数多く存在する。
しかし周期の根拠を明らかにし、それに責任をもとうとする評論家はいまだ世に現われてはいない。

ファッションに周期があることは誰もが薄々わかっているが、現象の追跡調査や歴史からそれを解読しようとすると、おぼろに見えていた周期性が見えなくる。まるで虹のように近づくと見えなくなるのだ。
歴史全体を見渡すパターン認識の段階で感じられる周期性も、細部へ観察を広げると、それは見えなくなる。

周期が本当に存在するのであれば、過去50年程のファッション誌のすべてを集めて人海戦術でそれを抽出できそうな気もするが、誰かがそれに成功したという話を聞いたことがない。

だが、実は周期性を抽出するのはとても簡単なことだったのだ。
それを抽出できないのは、調査する人間の価値観が調査対象とする時代の価値観と違うからなのであり、当然の結果といえる。
調べている人間の価値観のフィルターを通して現象を目で追うと、それは見えなくなってしまうのだ。
なぜなら、現象の周期性は社会的価値観の揺らぎが根源なのであり、それが人々の選択を通じて現象の揺らぎを世に現わしているからだ。